VS Code 1.121 を読む - Mermaid と Utility Model の実務アップデート

Visual Studio Code 1.121 は大きな UI 変更よりも、チャットで Mermaid 図を扱えること、コミットメッセージなどの軽い作業に使う Utility Model を指定できることが実務寄りの見どころ。設定方法と使いどころを短く整理します。

著者
岡崎 太
公開日
読了時間
6分で読めます
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VS Code 1.121 は、小さな作業を少し賢く分けるリリース

2026年5月20日に公開された Visual Studio Code 1.121 は、ここ数回のように「エージェント開発の景色が変わる」ほどの大きなリリースではありません。公式のハイライトは、Remote agents、Model configurability、Mermaid diagram preview、HTML file preview、Terminal tool optimizations です。 (Visual Studio Code)

個人的に実務で見るなら、今回の中心は 2 つです。

  1. Mermaid 図が Markdown preview、Notebook、チャットで扱えるようになった
  2. コミットメッセージなどの軽い裏方タスクに使う Utility Model を指定できるようになった

特に 2 つ目は地味ですが、AI コーディングを日常的に使う人ほど効きます。すべてを高性能モデルで処理するのではなく、コミットメッセージ、タイトル生成、リネーム候補、ブランチ名生成のような軽い作業は、速くて安価なモデルに寄せられるからです。

Mermaid が標準機能として入った

1.121 では、これまで拡張機能として提供されていた Mermaid preview support が、Mermaid Markdown Features という組み込み拡張として VS Code に入りました。対象は Markdown preview、Notebook の Markdown セル、そしてチャットです。 (Visual Studio Code)

Markdown では、これまで通り mermaid の fenced code block を書けば描画されます。

flowchart LR
  Issue[Issue] --> Branch[Branch]
  Branch --> Code[Implementation]
  Code --> Review[Review]
  Review --> Merge[Merge]

大きい図はプレビュー上でパンとズームができ、右クリックから Mermaid ソースをコピーできます。設計メモ、ADR、README、Issue の説明を Markdown で書く人にとっては、別拡張なしで最低限の図解が回るようになった、という理解でよさそうです。

チャットで使えるようになったのも地味に便利です。たとえば「この処理を Mermaid で図解して」と投げたとき、単なるコードブロックではなく、図として確認しやすくなります。複雑な設計図を作るというより、会話の途中でフローを一度可視化する用途に向いています。

Utility Model を指定できるようになった

今回いちばん実務寄りなのは、Utility Model の設定です。

VS Code は、チャット本体とは別に、裏側で軽いモデル呼び出しを行っています。公式ドキュメントでは、タイトル生成、要約、コミットメッセージ生成、リネーム候補、プロンプト分類、意図検出などが例として挙げられています。デフォルトでは GitHub Copilot が提供する Utility Model が使われますが、1.121 からは利用可能なモデルや BYOK モデルに差し替えられます。 (Visual Studio Code)

設定キーは 2 つあります。

  • chat.utilityModel
    • 一般的な Utility flow 用。タイトル生成、要約、settings search、Git review など。
  • chat.utilitySmallModel
    • 速く軽い Utility flow 用。コミットメッセージ、リネーム候補、ブランチ名生成、プロンプト分類、意図検出など。

公式ドキュメントでも、chat.utilitySmallModel には fast and inexpensive model が推奨されています。コミットメッセージを作るくらいなら、毎回いちばん強いモデルを使う必要はありません。ここを安価なモデルに寄せるのは、かなり自然な使い方です。 (AI language models in VS Code)

設定方法

まず UI から設定するなら、次の流れです。

  1. Command Palette で Preferences: Open Settings (UI) を開く
  2. chat.utilitySmallModel を検索する
  3. 候補に出てくる利用可能モデルから、軽量・低コストなものを選ぶ
  4. 必要なら chat.utilityModel も検索し、一般 Utility flow 用のモデルを選ぶ
  5. BYOK や拡張提供モデルを使う場合は、先に Chat: Manage Language Models からモデルを追加する

settings.json で管理したい場合は、形としては次のようになります。

{
  "chat.utilitySmallModel": "<commit-messageなどに使う軽量モデルID>",
  "chat.utilityModel": "<要約やGit reviewなどに使う標準モデルID>"
}

ここで注意したいのは、実際に入れるモデル ID が環境によって変わることです。Copilot のプラン、組織ポリシー、BYOK、モデルプロバイダー拡張によって候補が変わります。記事やチーム手順に固定値を書くより、まず Settings UI で候補を選び、必要なら歯車メニューの Copy Setting as JSON で正確な値を settings.json に写すのが安全です。VS Code の settings は settings.json でも編集でき、Settings UI から JSON 名と値をコピーできます。 (User and workspace settings)

実務でまず試すなら、chat.utilitySmallModel だけを軽いモデルに変えるのがよさそうです。

{
  "chat.utilitySmallModel": "<fast-and-cheap-model-id>"
}

この状態なら、チャット本体や大きな実装相談のモデル選択はそのままに、コミットメッセージやブランチ名生成のような小さな処理だけを軽量モデルへ逃がせます。設定後に違和感があれば Default に戻せば、GitHub Copilot 提供の Utility Model に戻ります。

ほかに見ておくところ

Remote agents は、Agents window から SSH や dev tunnel 経由でリモートマシン上の agent session を動かせる Preview 機能です。リモート側で long-lived な agent host が動き、クライアントを閉じてもセッションが継続します。仕組みとしてはかなり面白いですが、チーム標準に入れる前に接続先、認証、ログ、作業ディレクトリの扱いを決める必要があります。 (Visual Studio Code)

HTML file preview も、小さく便利です。ローカル HTML ファイルを右クリックや editor title bar から Integrated Browser で開けるようになりました。ちょっとした静的 HTML の確認に、別拡張を入れなくてよくなります。

Terminal まわりでは、agent から起動されたコマンドに VSCODE_AGENT 環境変数が付きます。CLI 側がこの値を見れば、進捗アニメーションを抑える、対話プロンプトを避ける、機械可読な出力に切り替える、といった実装ができます。エージェント対応 CLI を作る側には覚えておきたい変更です。

まとめ

Visual Studio Code 1.121 は、派手な新機能よりも、日常作業の摩擦を小さく削るリリースです。

  • Mermaid 図が Markdown preview、Notebook、チャットで標準的に扱える
  • chat.utilitySmallModel でコミットメッセージなどの軽いタスクを安価なモデルに寄せられる
  • chat.utilityModel で要約や Git review など、一般 Utility flow のモデルも指定できる
  • HTML preview や terminal tool 改善で、エージェント周辺の小さな詰まりが減る

大きな変化は少ない一方で、AI コーディングを毎日使っている人には、Utility Model の分離が効いてきます。強いモデルを使うべき作業と、安いモデルで十分な作業を分ける。1.121 は、その切り分けを VS Code の設定として扱えるようにしたリリースです。

当社は、生成 AI コンサルティング、生成 AI を活用したシステム開発、自社プロダクト開発を通じて、こうしたエディタ側の進化をチームの開発プロセスに落とし込む支援を行っています。 (Visual Studio Code)

参照元