業種別レポート生成AIWeb制作LLMO

【業種別】Web制作会社 — LLMO/AEO時代の「検索されない」への解

Web制作会社が、検索順位や制作物の納品だけでなく、顧客の一次情報をAIにも人にも参照できる形へ整え、発見・引用・問い合わせまで継続運用する商材へ更新するための着手順を示します。

分析
服部 淳
代表取締役 / 業務変革コンサルタント
公開日
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Key Findings

  • Pewが米国成人900人の6万8,879件を分析したところ、AI要約が出た検索で通常結果がクリックされた割合は8%、出なかった検索では15%だった
  • Ahrefsの30万キーワード分析では、AI Overviewが出た検索の1位CTRは1.6%。対照群の変化から推計した3.7%を約58%下回った
  • 最初の1業務は、継続顧客1社の重要な質問20件について、回答・根拠・更新責任・発見経路を点検することである

サマリ

Web制作会社にとって、生成AI検索は「SEOが終わる」という話ではありません。2025年の米国行動データでは、AI要約が表示された検索で通常結果へのクリックが少ない傾向が観測されました。検索順位だけでは、顧客との接点を説明しにくくなっています。

ここで売るべきものは、AIに効くと称する特別なファイルや、根拠のない「引用保証」ではありません。Google Search Centralは、生成AI検索でも従来のSEOの基盤が引き続き重要であり、Google検索へ出るための llms.txt、特別な構造化データ、AIだけに向けた書き換えは不要だと案内しています。

Web制作会社には、顧客のドメイン、CMS、アクセス解析、商品情報、担当者、更新履歴へ継続的に触れてきた強みがあります。この接点を使い、顧客が答えるべき質問を定め、一次情報をページへ整え、人と検索・AIの双方から発見できるかを定期的に確かめる。そうすれば、受注の単位を「サイトを作る」から「顧客の情報が選ばれ続ける状態を運用する」へ広げられます。

本レポートの結論は、継続顧客1社の重要な質問20件について、回答・根拠・更新責任・発見経路を点検することを最初の1業務にすることです。順位やAIの回答を保証するのではなく、事実の所在、技術的な到達性、露出、引用、問い合わせを同じ台帳で追います。

データ:業界の現在地

2025年の米国データでは、AI要約ありの通常結果クリックが8%だった

Pew Research Centerは、米国成人900人が共有した2025年3月の閲覧行動を基に、Google検索6万8,879件を分析しました。同じ検索語を第三者サービスで再実行し、2025年4月7日から17日時点の検索結果を取得しています。日本の利用者全体を示す調査ではなく、モバイルアプリや追跡対象外の端末も含みません。

このうちAI要約が出た検索は1万2,593件で、全体の18%でした。AI要約が出たページで通常の検索結果が次の遷移先になった割合は8%、AI要約が出なかったページでは15%です。要約内の出典リンクが次の遷移先になった割合は、AI要約が出たページの1%でした。

AI要約の有無と、検索直後の行動

米国成人900人の2025年3月のGoogle検索。次に訪れたURLと時刻から行動を分類した割合です。

検索結果への移動

  • 通常結果をクリック・AI要約なし
    15%
  • 通常結果をクリック・AI要約あり
    8%

閲覧の終了

  • セッション終了・AI要約なし
    16%
  • セッション終了・AI要約あり
    26%

Pew Research Centerの行動分類。検索結果への移動とセッション終了は別の行動です。AI要約の有無へ無作為に割り付けた実験ではないため、要約だけが差を生んだとする因果推論には使えません。

AI要約が出たページで閲覧セッションを終えた割合は26%、出なかったページでは16%でした。一方、どちらの検索でも最も多いのは、検索結果をクリックせずGoogle内の別ページへ進むか、別サイトへ移る行動です。この調査から、利用者が要約を読んだか、意思決定したかは分かりません。ただし、顧客サイトへのクリックが起きない検索がある以上、Web制作会社はサイト訪問以外の接点も観測する必要があります。

30万キーワードでは、AI Overview表示時の1位CTRが推計値を約58%下回った

Ahrefsは、AI Overviewが出た15万キーワードと、情報収集目的でAI Overviewが出なかった15万キーワードを選び、合計30万キーワードの集計済みGoogle Search Consoleデータを比較しました。対象はデスクトップ検索です。

2025年12月にAI Overviewが出たキーワードで、検索1位ページの平均CTRは1.6%でした。AI Overviewが出なかった情報検索のCTR変化を使い、AI Overviewが導入されなかった場合を推計した値は3.7%です。実測値は推計値を相対的に約58%下回りました。

AI Overview表示キーワードの検索1位CTR

Ahrefsの30万キーワード分析。2025年12月のデスクトップ検索です。

  • AI Overviewなしの場合の推計
    3.7%
  • AI Overviewありの実測
    1.6%

3.7%は対照群の2023年12月から2025年12月までの変化を適用した推計値、1.6%は実測値です。約58%は両者の相対差で、2.1ポイントの差と区別しています。観察データの比較であり因果関係を保証しません。

この結果も、日本の全検索や個別サイトへそのまま当てはめる数字ではありません。それでも、順位が同じなら同じ流入が得られるという前提で月次報告を続けることには無理があります。順位、表示、クリック、問い合わせを分け、AI要約やAI検索で顧客情報がどう扱われるかを別に観測する必要があります。

データ:この業界だけの構造

「AI向けの特殊実装」ではなく、顧客固有の根拠を運用できることが参入障壁になる

Google Search Centralの2026年7月版ガイドは、生成AI検索でも、クロール可能な技術構造、インデックス、独自で有用なコンテンツ、見える本文と一致する構造化データといったSEOの基盤を重視しています。Google検索のために llms.txt を作ること、文章を細かく分割すること、AI専用に言い換えること、特別な schema.org を追加することは必要ないと明記しています。

つまり、Web制作会社が新しい名称だけを付けて同じ改修を売る余地は長くありません。価値になるのは、顧客の事業に入り込み、公開してよい事実と公開できない情報を分け、誰が更新し、どのページを大元の回答とし、問い合わせへどうつなぐかを決められることです。

KDD 2024で発表された「GEO: Generative Engine Optimization」は、複数分野の1万クエリからなるGEO-benchで、出典、引用、統計などを含む表現を評価しました。GPT-3.5を中心とする研究用生成エンジンでは、論文独自の引用露出指標が最大40%向上した一方、効果は分野で異なりました。これは流入、クリック、問い合わせを測った結果ではありません。特定サービスでの掲載を保証せず、出典や統計の示し方を自社の質問群で検証するための材料です。

顧客の担当者へ一度質問すれば分かる事実でも、顧客サイト上で公開され、クロール可能でなければ、生成AI検索がその事実を安定して根拠に使うことは難しくなります。料金の条件、対応地域、納期、品質基準、導入手順、例外、資格、実績の母集団、更新日、判断責任者です。Web制作会社は、デザインと実装だけでなく、これらを聞き取り、公開可能な根拠へ変え、CMSで更新し、計測までつなげる位置にいます。

制作案件を、AI発見性の継続運用へ変える

AIへの掲載は保証せず、質問、根拠、到達性、反応を同じ単位で管理します。

  1. 質問と根拠をそろえる顧客が選ばれる20の質問を決め、回答、根拠資料、公開可否、更新責任者を記録します。
  2. 人と機械に届く形へ直す本文、内部リンク、画像、構造化データ、クロール、表示速度を整え、根拠へ戻れるページにします。
  3. 発見から商談まで測る検索表示、AIでの言及・引用、参照流入、指名検索、問い合わせを定期観測し、次の更新を決めます。

納品物ではなく、顧客の正しい情報が発見され、更新され、商談へつながる運用期間を契約単位にします。

服部の分析

服部がこれまでに見てきたWeb制作の現場を、個社が特定されない共通の型にまとめると、サイト公開後の契約は保守、アクセス解析、SEO記事制作へ分かれがちです。ところが、顧客から実際に届く相談は「アクセスが減った」だけではありません。「AIに聞いたら競合が出た」「自社の古い料金が答えられた」「強みが正しく説明されない」といった、発見前の接点に移っています。

この相談へ、順位計測の画面やAIが生成した回答の一覧だけを返しても、次の仕事は決まりません。AIの回答は質問、地域、時刻、利用者、製品更新で変わります。言及回数を増やすこと自体を目的にすると、顧客の売上や信頼と離れた作業が膨らみます。

私たちは、Web制作会社の参入障壁は、AIの内部仕様を知っていることではなく、顧客の事実を確認できる人と、公開ページを直せる人と、反応を測れるデータをすでにつないでいることだと見ています。新規の専門会社が調査だけを行うより、既存顧客のCMS、担当者、解析、更新会議へ入っている会社の方が、誤った情報を直し、根拠を更新し、問い合わせまで追いやすいからです。

商材名はLLMOでもAEOでも構いません。ただし、契約の中身は「AIに載せる施策一式」にしないことです。重要質問の管理、根拠ページの整備、技術監査、主要サービスでの定点確認、問い合わせへの接続、更新会議を明記します。掲載や順位ではなく、作業範囲と検証方法を約束します。

単価を落とさず提案し直すとは、従来のSEOを否定して別商品へ置き換えることではありません。検索の基盤を維持しながら、顧客の情報がAI要約、AI検索、通常検索のどこで発見されても、正しい根拠へ戻り、次の行動へ進める状態を運用対象に加えることです。

提言 — どう付き合っていくか

1. 最初の1業務を「継続顧客1社・重要質問20件の根拠監査」に絞る

業界全体のプロンプトを大量収集する前に、継続顧客を1社選んでください。顧客が受注前に必ず聞かれる質問、競合と比較される質問、条件を誤ると信用を失う質問を合わせて20件に絞ります。各質問に、現在の回答、根拠資料、公開ページ、更新責任者、最終確認日を付けます。

2. 特殊なAI対策より先に、到達性と事実の不一致を直す

robots.txt、noindex、HTTP状態、内部リンク、JavaScript描画、重複URL、モバイル表示を確認し、検索の技術要件を満たします。そのうえで、料金、地域、納期、資格、実績、手順、例外を見える本文に置き、構造化データは本文と一致させます。根拠のない大量ページ、架空のFAQ、不自然な言及づくりは対象外にします。

3. 20件の質問を、人が確認できる定点観測にする

通常検索の表示・順位・クリックに加え、主要なAI検索での言及、引用URL、回答の正誤を同じ質問単位で記録します。回答は毎回変わり得るため、1回のスクリーンショットを成果とせず、日付、条件、サービス、回答、引用元を残します。誤答はモデルを操作するのではなく、顧客ページの不足、古い記載、第三者情報との不一致へ分解します。

4. 月次契約は、露出ではなく「更新と商談への接続」で広げる

評価指標は、20件のうち根拠ページがある割合、誤った回答の解消、引用元の健全性、指名検索、参照流入、問い合わせ、商談化、更新までの日数です。AIでの掲載や順位を保証せず、根拠を更新し、結果を確認し、次の質問を選ぶ会議を契約にします。価値を確認してから質問数、商品、地域、言語を広げます。

着手順は次のとおりです。継続顧客1社を選ぶ → 重要質問20件と根拠をそろえる → 到達性と事実を直す → 人が定点観測し、問い合わせまで戻す。最初の1業務は、重要質問20件の根拠監査です。AI向けの魔法を売るのではなく、顧客の正しい情報が選ばれ続ける運用を売ってください。

出典・参照データ

本レポートの分析は以下の一次情報に基づいています。統計・数値の詳細は各出典をご確認ください。

  1. Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results
    Pew Research Center

    米国成人900人が共有した2025年3月の閲覧行動と、6万8,879件のGoogle検索を分析。AI要約の出現件数、通常結果と要約内出典のクリック、セッション終了の割合を引用

  2. Update: AI Overviews Reduce Clicks by 58%
    Ahrefs

    AI Overviewあり15万件、情報検索でAI Overviewなし15万件の計30万キーワードと集計済みSearch Consoleデータを比較。1位CTRと約58%の相対差を引用

  3. Optimizing your website for generative AI features on Google Search
    Google Search Central

    生成AI検索でも従来のSEO基盤が有効で、llms.txt、特別な構造化データ、AI向けの書き換えをGoogle検索用の必須施策としない公式指針を参照

  4. GEO: Generative Engine Optimization
    ACM SIGKDD / arXiv

    複数分野の1万クエリからなるGEO-benchを参照。GPT-3.5中心の研究用生成エンジンで、独自の引用露出指標が最大40%向上した結果と、分野で効果が異なる限界を引用