Code with Claude 2026 Tokyo参加レポート:AI開発は「便利な道具」から「任せられる仕事」へ進んでいる

2026年6月10日に東京で開催されたCode with Claude 2026を視聴・参加しました。Anthropicの発表と日本企業の事例から、AI開発が補助ツールではなく、チームの開発プロセスに組み込まれる段階へ進んでいることを感じました。

著者
岡崎 太
CTO / AIアーキテクト
公開日
読了時間
6分で読めます
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2026年6月10日、Anthropic の開発者向けイベント Code with Claude 2026 Tokyo に参加しました。現地開催に加えてライブ配信もあり、YouTube では Code with Claude 2026 | Tokyo としてメインステージの様子が公開されています。

一日を通して、Claude Code、Claude Platform、Research の各トラックで、AIを使った開発がどこへ向かっているのかがかなり具体的に示されました。

率直に、とても面白いイベントでした。

特に Anthropic の発表は有意義でした。単に「新しいモデルが出ました」「性能が上がりました」という話ではなく、AIをどうチームの仕事に組み込み、どう任せ、どう評価し、どう安全に運用するかという実務の話に踏み込んでいたからです。

最後には、Claude のアンバサダーにも応募しました。自分が日々やっているAI仕様駆動開発や、Claude Code / Codex を使った開発プロセスの知見を、もっと外に開いていきたいと感じたからです。

Code with Claude Tokyoとは何だったのか

Code with Claude は、Anthropic が開催する開発者向けイベントです。2026年は San Francisco、London、Tokyo で開催され、東京は6月10日に行われました。

公式ページでは、イベントの内容は「hands-on workshops, live demos of new capabilities, and conversations with the teams behind Claude」と説明されています。つまり、製品発表だけではなく、実際に作る、動かす、設計する、運用するところまで扱うイベントです。

東京会場のアジェンダも、その方向性がはっきりしていました。

  • Claude Code の新機能やスケール運用
  • Claude Platform による本番向けエージェント構築
  • モデル選定、評価、プロンプト、思考制御
  • Mercari、CyberAgent、Rakuten、Mizuho、NRI、freee など日本企業のAI活用事例
  • AWS、Microsoft、Google Cloud などクラウド連携

特に印象に残ったのは、イベント全体が「AIを使う」から「AIに任せる」へ視点を移していたことです。

補助ツールではなく、仕事を委譲する相手として見る

これまでのAI開発ツールは、どうしても「入力を少し楽にする道具」として語られがちでした。

コード補完、要約、検索、ちょっとした修正、テストのたたき台。もちろん、それだけでも価値はあります。しかし Code with Claude Tokyo で語られていたのは、もう少し先の段階です。

長いタスクを任せる。複数リポジトリをまたぐ。既存の制約を読ませる。途中で必要な情報を取りに行かせる。結果を評価し、次の実行に活かす。

この流れになると、AIは単なる入力補助ではありません。開発プロセスの中で、一つの仕事を担当する実行主体に近づいていきます。

ただし、ここで大事なのは、AIが勝手に何でもできるようになるという話ではないことです。むしろ逆です。

AIに任せられる仕事が増えるほど、人間側には次の設計が必要になります。

  • 何を任せてよいのか
  • どの情報を渡すのか
  • どの時点で人間が確認するのか
  • 何を評価指標にするのか
  • 失敗したときにどう戻すのか
  • チームの知見としてどう残すのか

この構造は、私が普段から提唱しているAI仕様駆動開発とかなり近いものです。

Anthropicの発表が有意義だった理由

今回、Anthropic の発表で一番よかったのは、AIエージェントを「すごいデモ」として見せるだけではなく、運用の現実に引き寄せていた点です。

AIが長い仕事をできるようになるほど、チームは期待値を上げます。しかし本番開発では、期待値だけでは足りません。

必要なのは、仕様、コンテキスト、権限、ログ、評価、コスト、セキュリティ、失敗時の復旧です。

たとえば Claude Code をチームで使う場合、単に各自が好きなようにプロンプトを書くのではなく、リポジトリごとの前提、Issueの粒度、レビュー観点、禁止事項、テスト実行、デプロイ手順をAIが読める形にしておく必要があります。

Claude Platform で本番向けのエージェントを作る場合も同じです。エージェントが外部ツールを呼び、ファイルを読み、業務システムにアクセスするなら、権限と境界を設計しなければいけません。

Anthropic の発表は、この「実務に落とすための設計」を中心に置いていたように感じました。

これは、AI開発に関わる人にとって非常に重要です。AIツールの進化が速いほど、目先の機能差だけを追いかけたくなります。しかし、長く効いてくるのは、ツールをチームのプロセスにどう接続するかです。

日本企業の事例が示していたこと

東京開催ならではの価値は、日本企業の事例が多かったことです。

Mercari、CyberAgent、Rakuten、Mizuho、NRI、freee など、規模も業種も異なる企業が、Claude をどう組織の中に入れているのかが語られていました。

ここで面白かったのは、どの話も「個人がAIで速く書く」だけでは終わっていなかったことです。

開発プロセスをどう変えるか。チームにどう標準化するか。評価をどう回すか。既存の業務や組織文化とどう接続するか。

結局、AI開発の本当の難しさは、モデルの使い方だけではありません。組織の中で、AIを使った仕事の進め方を再設計することです。

個人がAIで速くなる段階から、チームがAIで仕事の流れを変える段階へ進む。その移行期にいることを、今回の事例から強く感じました。

AI仕様駆動開発との接点

私が日々取り組んでいるAI仕様駆動開発では、AIに仕事を任せる前に、次のようなものを整えます。

  • プロジェクトの目的と制約
  • アーキテクチャとADR
  • ドメイン用語と判断基準
  • 実装パターンと禁止事項
  • Issueごとの受け入れ基準
  • テスト観点
  • レビューで得た知見の蓄積

これは、AIを縛るためのものではありません。AIが迷わず働けるようにするための環境整備です。

Code with Claude Tokyo を見て、やはりこの方向は間違っていないと感じました。

AIの能力が上がるほど、「よいプロンプトを書く」だけでは足りなくなります。なぜなら、AIに任せる仕事が長く、複雑になり、チームの既存ルールと深く関わるからです。

そのとき必要なのは、一回限りの指示ではなく、継続的に参照できる仕様です。

Claude Code でも Codex でも、強いのは「今この瞬間のプロンプト」だけではありません。リポジトリに残された文脈、Issue、テスト、レビュー履歴、運用手順まで含めて渡せると、AIはかなり安定します。

今回のイベントは、その方向性をあらためて確認する場になりました。

アンバサダーに応募した理由

イベントの最後に、Claude のアンバサダーに応募しました。

理由はシンプルです。Claude を使った開発の可能性を、自分の中だけで閉じるにはもったいないと感じたからです。

私は普段から、Claude Code、Codex、GitHub Issue、Markdownの仕様書、レビュー、ナレッジ蓄積を組み合わせて、AIに実務を任せる開発プロセスを試しています。

うまくいくこともあります。失敗することもあります。むしろ、失敗したときに何が足りなかったのかを仕様や運用に戻していくことが重要です。

この知見は、同じようにAI開発を現場に入れようとしている人たちに役立つはずです。

AIツールは、触った人だけが速くなる段階から、チームや地域の開発文化を変える段階に入っています。その中で、自分もコミュニティ側に立って、実践例を共有し、学び合う役割を持ちたいと思いました。

まとめ

Code with Claude 2026 Tokyo は、AI開発の現在地をかなり具体的に見せてくれるイベントでした。

印象に残ったのは、AIを「便利な補助ツール」としてではなく、「設計すれば任せられる仕事の担い手」として扱う流れです。

そのためには、モデル性能だけでなく、仕様、コンテキスト、評価、権限、コスト、チーム運用まで含めて考える必要があります。

Anthropic の発表は、その現実的な論点に踏み込んでいて、とても有意義でした。日本企業の事例からも、AI開発が個人技ではなく、組織の開発プロセスへ広がっていく流れが見えました。

私自身も、AI仕様駆動開発をさらに磨きながら、Claude を活用した実務の知見をもっと共有していきたいと思います。

そして、アンバサダーへの応募がその一歩になればいいなと考えています。

参考