GPT-5.6 Sol・Terra・Lunaの使い分け──Claudeで言うとどのモデル?

GPT-5.6 Sol・Terra・Lunaは何が違うのか。公式発表とベンチマークをもとに役割を整理し、Claude Fable 5・Opus 4.8・Sonnet 5・Haiku 4.5との対応や、開発現場での選び方を解説します。

著者
岡崎 太
CTO / AIアーキテクト
公開日
読了時間
8分で読めます
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OpenAIから、GPT-5.6シリーズの限定プレビューが発表されました。

今回登場したのは、Sol、Terra、Lunaの3モデルです。名前は覚えやすいのですが、「結局どれを選べばよいのか」「Claudeで言うと、どのモデルに近いのか」は少し分かりにくい。

そこで最初に、名前から受けた印象をもとに役割を整理してみました。

GPT-5.6 Sol、Luna、Terraの役割を最初の仮説として整理した図

この図の方向性は分かりやすい一方、OpenAIの公式発表と照らすと、役割の割り当てには修正が必要でした。

  • Solは「速く試すモデル」ではなく、シリーズ最上位のフラッグシップ
  • Terraは「堅牢な最終実装専用」ではなく、日常業務に向くバランス型
  • Lunaは「深く考えるモデル」ではなく、高速・低コスト型

名前から受けるイメージと、製品としての位置づけは必ずしも一致しません。この記事では、OpenAIとAnthropicの公式情報をもとに、3モデルの役割と使い分けを整理します。

まず結論:Sol、Terra、Lunaの正しい役割

GPT-5.6 Sol、Terra、Lunaの正しい役割、Claude対応、公式ベンチマークをまとめた比較図

OpenAIの説明を短くまとめると、次のようになります。

GPT-5.6 公式の位置づけ Claudeで近い役割 向いている仕事
Sol 最上位のフラッグシップ Opus 4.8〜Fable 5 難しい設計、長時間の自律作業、研究、セキュリティ
Terra 日常業務向けのバランス型 Sonnet 5 通常の開発、エージェント実行、品質とコストの両立
Luna 高速・低コスト型 Haiku 4.5 小さな修正、変換、分類、大量処理

ここでのClaude対応は、同じベンチマークスコアを持つという意味ではありません。各社のラインアップにおける役割、能力、速度、価格の位置づけが近いという比較です。

ClaudeはFable、Opus、Sonnet、Haikuの4階層、GPT-5.6はSol、Terra、Lunaの3階層です。そのため、完全な1対1対応にはできません。価格帯と通常の高難度実務ではSolとOpus 4.8が最も近く、数日単位の最高難度・長時間エージェントではSolとFable 5が重なります。

Sol:最も難しい仕事を任せるフラッグシップ

Solは、GPT-5.6シリーズで最も高い能力を持つモデルです。

OpenAIはSolを「これまでで最も強力なモデル」と位置づけ、コーディング、生命科学、サイバーセキュリティにおけるエージェント能力の向上を紹介しています。特にTerminal-Bench 2.1では、コマンドライン上で計画、反復、ツール連携を行う能力について新しい最高水準を記録したと説明しています。

また、GPT-5.6ではSol向けに新しいmax reasoning effortが追加されました。さらに、複数のサブエージェントを使って複雑な仕事を進めるultraモードも発表されています。

Claudeで主に対応するのはClaude Opus 4.8です。

AnthropicはOpus 4.8を、複雑なエージェントコーディングと企業業務向けのモデルと位置づけています。API価格も100万トークンあたり入力5ドル、出力25ドルで、Solの入力5ドル、出力30ドルと近い価格帯です。通常の高難度開発や複雑な実務を比較するなら、Opus 4.8がSolの最も直接的な対応先です。

一方、Fable 5はAnthropicが一般提供する中で最も高性能なモデルです。数日単位の複雑なタスク、大規模なコード移行、深い調査、複数段階の知識労働などを、少ない監督で進める用途に位置づけられています。価格も入力10ドル、出力50ドルで、Opus 4.8やSolより上です。

したがって、Sol ≒ Opus 4.8〜Fable 5と捉えるのが自然です。通常の高難度実務はOpus 4.8、最高難度・長時間側はFable 5に近い、と分けると判断しやすくなります。

Sol、Opus 4.8、Fable 5は、単に「賢いから常に使う」モデルではありません。高い能力が必要な、次のような場面で選ぶモデルです。

  • 複数システムにまたがる設計や原因調査
  • 大規模な移行や長時間の自律コーディング
  • 何度もやり直すコストが高い、難しい一発勝負
  • 深い研究、セキュリティ、専門的な分析
  • 複数エージェントを束ねる親エージェント

Terra:普段使いの中心になるバランス型

Terraは、OpenAIが「日常業務向けのバランス型」と説明するモデルです。

GPT-5.5に競合する性能を、半分の価格で提供するとされています。API価格は100万トークンあたり入力2.5ドル、出力15ドルで、Solのちょうど半分です。

Claudeで近いのはClaude Sonnet 5です。

Sonnet 5は、AnthropicのFreeとProで標準モデルになっており、推論、ツール利用、コーディング、知識労働を効率よくこなすエージェント実行層として位置づけられています。高いeffortでは、一部のタスクで上位のOpus 4.8に近い能力へ届くとも説明されています。

日常の開発では、まずTerraから始めるのが自然です。

  • Issueを読んで実装、テスト、修正まで進める
  • 通常規模の機能追加やバグ修正
  • コードレビュー、リファクタリング、ドキュメント作成
  • ブラウザやターミナルを使う業務エージェント
  • 能力だけでなく、速度とコストも重視する本番処理

難しさが読めない仕事でも、最初からSolを使う必要はありません。Terraで始め、設計が収束しない、長時間の自律作業で詰まる、専門性が足りないと判断したらSolへ上げる運用が現実的です。

Luna:速さとコストが重要な大量処理向け

Lunaは、シリーズで最も高速かつ低価格なモデルです。API価格は100万トークンあたり入力1ドル、出力6ドルです。

Claudeで近いのはClaude Haiku 4.5です。

Haiku 4.5は、応答性とコスト効率を重視しながら、コード生成やエージェントのサブタスクを担うモデルとして提供されています。Lunaも同様に、高度な一件へ長く考えるより、短い仕事を多数こなす場面で価値を発揮します。

  • 小さなコード修正や定型的な変換
  • 分類、抽出、要約、ルーティング
  • 大量のファイルや問い合わせの一次処理
  • 上位モデルを呼ぶ前のトリアージ
  • マルチエージェント構成における軽量な子エージェント

重要なのは、Lunaを「能力の低い代用品」と考えないことです。仕事の難易度が十分に低く、処理量が多いなら、速さと価格そのものが品質になります。

ベンチマークで見る3モデルの違い

OpenAIは、一般提供時に評価結果を拡充するとしており、限定プレビュー時点では3モデルを横並びで比較できる公開ベンチマークは限られています。

現時点で公式System Cardから3モデルを同じ条件で比較できる代表例が、次の2つです。

評価 Sol Terra Luna
HealthBench Professional(length-adjusted) 60.5 57.7 55.7
Search & Function Calling 91.0 94.6 89.7

HealthBench Professionalでは、Solが最も高い結果です。一方、Search & Function CallingではTerraがSolを上回っています。

この結果からも、「一番大きいモデルなら、すべての評価で必ず一番高い」とは限らないことが分かります。モデル選択では、総合能力だけでなく、実際に任せるワークフローとの相性を見る必要があります。

なお、OpenAIとAnthropicが発表するスコアは、エージェントハーネス、ツール、reasoning effort、試行回数などの条件が異なる場合があります。そのため、異なる公式発表から数字だけを抜き出し、Sol、Opus 4.8、Fable 5を厳密に順位づけするのは適切ではありません。

今回の比較では、同じ条件で公開されたGPT-5.6内部の数値はスコアで比較し、Claudeとの関係は製品ポジションで比較しています。

実務では「Lunaでさばき、Terraで進め、Solに上げる」

3モデルを固定的な職種に割り当てるより、仕事の難易度に応じて段階的に切り替える方が使いやすいと考えます。

  1. Lunaでさばく
    分類、要約、変換、単純な修正を高速に処理する。
  2. Terraで進める
    通常の開発や業務エージェントは、能力とコストのバランスがよいTerraに任せる。
  3. Solに上げる
    設計が難しい、長時間の自律性が必要、失敗コストが高い仕事だけSolへエスカレーションする。

Claudeで同じ運用を考えるなら、Haikuでさばき、Sonnetで進め、Opusに上げるという形になります。それでも解けない最高難度・数日単位の仕事だけ、Fableへ上げます。

この考え方は、チームの役割分担にも似ています。すべての仕事を最上位モデルへ渡すのではなく、難易度、リスク、処理量に合わせて適切な実行者へルーティングする。AIエージェントを本番運用するうえでは、モデル単体の最高スコアより、この振り分け設計の方が重要になっていくはずです。

まとめ

GPT-5.6の3モデルは、次のように覚えると分かりやすいでしょう。

  • Sol:最も難しく、長く、深く考える仕事。ClaudeならOpus 4.8が主対応で、最高難度・長時間側はFable 5に近い
  • Terra:日常の開発と業務の中心。ClaudeならSonnet 5に近い
  • Luna:速さと低コストを活かす大量処理。ClaudeならHaiku 4.5に近い

最初に作った図では、天体のイメージから役割を当てはめていました。しかし公式情報を読むと、Solは太陽のように「すぐ照らす」モデルではなく、シリーズの中心にある最上位モデルでした。Terraが日常の仕事を支え、Lunaが軽快に回る。この並びが、OpenAIの意図する使い分けです。

モデル選びで迷ったら、普段はTerra、単純で大量ならLuna、難しく長い仕事だけSol。まずはこの基準から始めるのがよさそうです。

参考

※ 本記事は2026年7月13日時点の公式発表に基づきます。GPT-5.6は限定プレビュー中であり、一般提供時に評価結果や利用条件が更新される可能性があります。