GitHub Copilotの本命はどれ? Gemini 3.7 Flash・Claude Sonnet 5・GPT-5.6 Lunaを価格と実力で比較

GitHub Copilotで選べるGemini 3.7 Flash、Claude Sonnet 5、GPT-5.6 Lunaを、最新の従量単価と公式ベンチマークで比較します。性能同格のGeminiとSonnet、最安の軽量モデルLunaをどう使い分けるべきか、GitHub Copilot Agent/CLIの実務視点で整理しました。

著者
岡崎 太
CTO / AIアーキテクト
公開日
読了時間
14分で読めます
Share

2026年8月13日、Gemini 3.7 FlashがGitHub Copilotで使えるようになりました。Google Antigravityにも提供されており、Googleは「コーディングとエージェント向けの最も高性能なワークホースモデル」と位置づけています。

ここで気になるのが、GitHub Copilotの従量課金で、どのモデルを選ぶと最も費用対効果が高いのかです。

Googleが公開した比較表では、Gemini 3.7 FlashはClaude Sonnet 5に対し、コーディング・長文脈・多くのエージェント評価で同等以上の結果を示しています。それでいて、GitHub Copilotの入力・出力単価はSonnet 5の37.5%です。

さらに今回は、OpenAIの軽量モデルGPT-5.6 Lunaも比較に加えます。Lunaは2026年7月30日に大幅値下げされ、現在のGitHub Copilot標準単価は入力$0.20・出力$1.20です。Gemini 3.7 Flashよりさらに安い一方で、GitHubの分類ではGemini 3.7 FlashとSonnet 5が「Versatile」、Lunaは「Lightweight」です。つまり、3モデルは価格順に並べるだけでは正しく判断できません。

この記事では、2026年8月14日時点の公式情報を基に、価格、性能、得意分野、そして実務での使い分けを整理します。

まず結論:標準はGemini、大量処理はLuna、難しい知識作業はSonnet

先に選定の目安をまとめると、次のようになります。

使い方 第一候補 理由
日常のGitHub Copilot Agent/CLI Gemini 3.7 Flash コーディングとエージェント評価が強く、Sonnet 5より62.5%安い
リポジトリ探索、定型修正、テスト反復を大量に回す GPT-5.6 Luna 標準単価が3モデル中で最安。軽量モデルとして高いコーディング性能を持つ
複雑な業務文書、設計意図、判断材料の整理 Claude Sonnet 5 Googleの比較表でGDPVal-AA v2と一部のデスクトップ/研究評価が優位
長文脈やマルチモーダル入力を含む実装 Gemini 3.7 Flash 128K長文脈、PDF、グラフ、長時間動画の公開評価で強い

ただし、これはベンチマークから導く初期設定です。最終的には、自社のIssueを同じ完了条件で解かせ、1回の単価ではなく「マージできたIssueあたりの総コスト」で判断する必要があります。

GitHub Copilotの従量単価を比較する

GitHub Copilotの公式価格表では、プランに含まれる利用枠を超えた分が、トークン使用量に応じてGitHub AI Creditsへ換算されます。1 AI Creditは$0.01で、下表はすべて100万トークンあたりの単価です。

項目 Gemini 3.7 Flash Claude Sonnet 5 GPT-5.6 Luna 最安
入力 $0.75 $2.00 $0.20 Luna
キャッシュ入力 $0.075 $0.20 $0.02 Luna
キャッシュ書き込み $2.50 $0.25 Geminiは課金項目なし
出力 $3.75 $10.00 $1.20 Luna
GitHub上の分類 Versatile Versatile Lightweight

価格だけを見ると、関係は明快です。

  • Gemini 3.7 FlashはSonnet 5の37.5%の単価で、入力・出力とも62.5%安い
  • LunaはSonnet 5と比べ、入力が90%安く、出力が88%安い
  • LunaはGemini 3.7 Flashと比べても、入力が約73.3%安く、出力が68%安い

Lunaには長コンテキスト料金があり、入力が20万トークンを超えると、入力$0.40・キャッシュ入力$0.04・キャッシュ書き込み$0.50・出力$1.80になります。それでもGemini 3.7 FlashやSonnet 5より低い水準です。

なお、Gemini 3.7 Flashの$0.75/$3.75は2026年12月31日までのプロモーション価格です。Google DeepMindのモデルカードによると、2027年1月1日から入力$1.50・出力$7.50へ上がります。その場合でもSonnet 5の75%、つまり25%安い計算です。

AntigravityとGitHub Copilotの価格は同じではない

Gemini 3.7 FlashはGoogle Antigravityにも提供されていますが、上の単価表はGitHub Copilotの超過利用分に対するものです。

Antigravityは、Google AIプランに応じた基本利用枠と、枠を超えた後のAI Creditsという二段構成です。Google Oneの案内では、超過分はモデルの標準API価格とリクエストの複雑さに基づいて控除されます。GitHub CopilotのAI CreditsとAntigravityのAI Creditsは、名称が似ていても別の仕組みです。

特に日本では、Google Oneの追加AI Credits購入が現時点で提供されていません。Antigravityの基本枠で収まるか、GitHub Copilotの従量課金を使うかは、利用量と地域条件を分けて判断する必要があります。

Gemini 3.7 FlashとSonnet 5:Googleの同一表ではどう違うか

以下は、Gemini 3.7 FlashのモデルカードでGoogleが公開している比較値です。まず、コーディングとエージェント系を見ます。

ベンチマーク 測定対象 Gemini 3.7 Flash Claude Sonnet 5
FrontierCode 1.1 Main プロダクションコード品質 43.6% 42.7% Gemini +0.9pt
DeepSWE v1.1 長期ソフトウェアエンジニアリング 65.3% 53.8% Gemini +11.5pt
Code Arena Web開発 1588 Elo 1541 Elo Gemini +47
Terminal-bench 2.1 エージェント型ターミナルコーディング 85.8% 80.4% Gemini +5.4pt
Terminal-bench 3.0 汎用エージェント能力 14.9% 14.6% Gemini +0.3pt
AutomationBench エンタープライズ業務自動化 30.4% 10.7% Gemini +19.7pt

Googleが同じ表に掲載したコーディング・エージェント系6評価では、Gemini 3.7 Flashがすべて同等以上です。特にDeepSWE v1.1の+11.5ポイントとAutomationBenchの+19.7ポイントは、長い実装作業や複数ステップの業務自動化を考えるうえで目を引きます。

一方で、すべての仕事でGeminiが勝つわけではありません。

ベンチマーク 測定対象 Gemini 3.7 Flash Claude Sonnet 5 優位
Artificial Analysis Intelligence Index v4.1 総合知能の合成指標 56点 55点 Gemini
GDPVal-AA v2 ナレッジワーク 1525 Elo 1598 Elo Sonnet
Harvey LAB-AA 複雑な法務ワークフロー 90.7% 90.1% Gemini
GDP.pdf 専門PDF理解 34.0% 28.0% Gemini
CharXiv(ツールなし) 複雑なグラフからの情報統合 84.5% 77.0% Gemini
CharXiv(ツールあり) 同上 88.7% 88.3% Gemini
LVBench 長時間動画理解 85.4% 68.5% Gemini
GDM-MRCR v2(8-needle) 128K長文脈性能 97.0% 81.5% Gemini
HLE-Verified 分野横断の専門推論 53.6% 31.0% Gemini

Artificial Analysis Intelligence Indexの56点と55点は、正答率(%)ではありません。複数の評価を統合した指数スコアで、数値が高いほど総合評価が高いことを表します。

ベンチマーク 測定対象 Gemini 3.7 Flash Claude Sonnet 5 優位
OSWorld-2.0 GUI/PC操作エージェント 47.9% 比較値なし
Agent’s Last Exam マルチモーダルPC/OSエージェント 26.3% 33.3% Sonnet
BioMysteryBench(human solvable) バイオ情報研究推論 87.1% 87.5% Sonnet
BioMysteryBench(human difficult) 難しいバイオ研究推論 43.5% 34.1% Gemini
LABBench2 生物学の実務研究タスク 82.1% 80.1% Gemini

Sonnet 5は、GDPVal-AA v2で73 Elo、Agent’s Last Examで7ポイント上回りました。設計意図を言語化する仕事、複雑な業務文書を踏まえた判断、デスクトップ操作を含む難しいタスクでは、Sonnet 5を試す理由があります。

ただし、この表はGoogleが公開した評価です。モデルごとに最適化された設定、推論予算、エージェント構成が使われる場合があり、GitHub Copilotで同じIssueを解かせた結果そのものではありません。

GPT-5.6 Lunaは「安いだけ」ではない

Lunaを加えると、比較は少し複雑になります。GoogleのGemini 3.7 Flash対Sonnet 5表にはLunaが含まれていないため、LunaだけはOpenAIのGPT-5.6公式発表に掲載された値を参照します。

ベンチマーク GPT-5.6 Luna Gemini/Sonnet表との関係
Artificial Analysis Intelligence Index v4.1 51.2点 Gemini 56点、Sonnet 55点より低い。ただし公開元が異なる
SWE-Bench Pro 62.7% Gemini 3.7 Flash/Sonnet 5の同一値はGoogleの3.7表に掲載なし
DeepSWE v1.1 67.2% Gemini 65.3%、Sonnet 53.8%と同名評価。ただし公開元が異なる
Terminal-Bench 2.1 84.7% Gemini 85.8%に近く、Sonnet 80.4%を上回る参考値
AutomationBench 14.9% Gemini 30.4%、Sonnet 10.7%の中間。ただし公開元が異なる
GDPVal-AA v2 1591.8 Elo Sonnet 1598 Eloに近く、Gemini 1525 Eloを上回る参考値
gdp.pdf 22.7% Gemini 34.0%、Sonnet 28.0%より低い参考値
Agents’ Last Exam 50.3% Google表の値より高いが、評価条件を揃えた直接比較には使えない

この表の51.2点も正答率ではなく、Artificial Analysis Intelligence Indexの指数スコアです。また、GDPVal-AA v2の1591.8、1598、1525は、いずれも人間の性能を1000に置いたEloレーティングであり、正答率ではありません。

この結果から言えるのは、Lunaが単純な補完専用モデルではないことです。OpenAIはLunaを「コスト重視の高ボリューム用途向け」と説明していますが、DeepSWE v1.1やTerminal-Bench 2.1では、より上位のモデルと競争できる数値を公開しています。

一方で、総合知能指標や専門PDF理解はGemini 3.7 Flashより低く、Googleの表にあるFrontierCode、Code Arena、長時間動画、128K長文脈などは、同じ条件で比較できるLunaの値がありません。したがって、現時点でLunaを「Gemini 3.7 Flashの完全な上位互換」と呼ぶ根拠はありません。

実務上の位置づけは、高性能モデルを常に使うのではなく、探索と反復をLunaへ逃がすための強力な低コスト層と考えるのが自然です。

トークン単価ではなく「完了コスト」で選ぶ

GitHub Copilot AgentやCLIでは、ユーザーが入力した文章だけがコストになるわけではありません。リポジトリから読み込んだコード、会話履歴、ツール結果、生成した差分や説明もトークンになります。

そのため、安いモデルが何度も失敗してやり直せば、最終的なコストは高くなります。逆に、高価なモデルが1回で正しい修正とテストまで終えれば、Issue単位では安くなることがあります。

比較するなら、次の指標を同じIssueで記録します。

  1. 完了までの入力・キャッシュ・出力トークン
  2. ツール呼び出し回数と再試行回数
  3. テストが通るまでの修正回数
  4. 人間または別モデルのレビュー指摘数
  5. 完了までの経過時間
  6. 最終的にマージできたか

たとえば、単価が3分の1でも、出力が3倍に膨らみ、2回やり直せば優位性は消えます。見るべきKPIは「100万トークンの価格」ではなく、レビューを通過した変更1件を作る総費用と時間です。

FEEL-FLOWで試すなら、この3段階ルーティング

フィールフロウでは、仕様、Issue、実装、テスト、レビュー、マージ、知見蓄積までを一つの開発サイクルとして扱っています。その前提なら、3モデルは次のように振り分けられます。

1. Luna:探索と機械的反復

  • 関連ファイルの検索と要約
  • 小さな型エラーやlint修正
  • テスト失敗の分類
  • 既存パターンに沿った定型実装
  • 大量の独立した軽作業

2. Gemini 3.7 Flash:日常の実装エージェント

  • Issueから実装方針を組み立てる
  • 複数ファイルにまたがる機能追加
  • ターミナルでの実装・テスト・修正ループ
  • 長い仕様や大きなリポジトリを読んだ変更
  • 画像、PDF、動画を含むマルチモーダルな調査

3. Sonnet 5:判断密度の高い仕事

  • 曖昧な要件から設計意図を整理する
  • 業務文書や契約・運用制約を踏まえた分析
  • 複数の利害や例外を含む仕様レビュー
  • GeminiやLunaの結果に違和感がある時のセカンドオピニオン

この分業なら、品質を落とさず、Sonnet 5を常時使うより総コストを抑えられる可能性があります。なお、これは公式ベンチマークから導いた運用仮説であり、FEEL-FLOWの同一Issue A/B実測結果ではありません。

まとめ

Gemini 3.7 Flashは、GitHub Copilotの新しい標準候補としてかなり魅力的です。Googleが同一表で示したコーディング・エージェント系6評価ではSonnet 5と同等以上で、現行単価は62.5%安く設定されています。

GPT-5.6 Lunaは、さらに低い入力$0.20・出力$1.20で、探索、定型修正、テスト反復を大量に回す用途の有力候補です。ただしGitHub自身もLightweightに分類しており、Gemini 3.7 FlashやSonnet 5と同格の万能モデルとしてではなく、低コスト層として使う方が安全です。

Sonnet 5は最も高価ですが、GDPVal-AA v2やAgent’s Last Examのように優位な領域があります。設計や業務知識の解釈が成否を分ける仕事では、価格差を払う価値が残っています。

今回提案する初期設定は、Lunaで広く探索し、Gemini 3.7 Flashで実装を進め、難しい判断だけSonnet 5へ上げるという3段階です。そして実際の採用判断は、同じIssue、同じテスト、同じレビュー条件でA/B検証し、「マージできた変更あたりの総コスト」で更新していきます。

参考資料