Notionに眠る知見をAIスキルにする:Fable 5で蒸留して見えたこと

創業以来Notionに残してきた議事録、過去ブログ、14冊の書籍知をClaude Fable 5で蒸留し、ClaudeやCodexから呼び出せるSkills / Pluginにした体験を整理します。

著者
岡崎 太
CTO / AIアーキテクト
公開日
読了時間
7分で読めます
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筆者の利用環境では Claude Fable 5 をサブスク枠で使えるのが 2026年7月7日まで、ということで、短い期間ですがかなり集中的に使っています。

その中で面白かったのが、「ナレッジを蒸留する」という使い方でした。

弊社では 2025年4月の創業以来、会議は必ず Notion に議事録を残す運用にしてきました。日々の会議、顧客とのやり取り、プロダクトの検討、システム開発の判断、AI仕様駆動開発の試行錯誤。気づけば、Notion の中にはかなりの知見が溜まっていました。

ただ、溜まっていることと、使えることは別です。

Notion にページがある。検索すれば見つかる。過去の議事録も残っている。けれど、AIエージェントが作業中に必要な形で呼び出せるかというと、まだ距離がありました。

そこで Fable 5 に、Notion に溜まった知見を抽出できないか聞いてみました。

返ってきた言葉が「蒸留します」でした。

「蒸留」という言葉がしっくり来た

最初は、少し大げさな表現にも聞こえました。

しかし、実際にやってみると「要約」よりも「蒸留」の方が近いと感じました。

要約は、長い文章を短くする作業です。

蒸留は、長い経験の中から再利用できる成分を取り出す作業です。

会議の議事録には、雑談、背景、未確定の話、途中で消えた案、誰かの一言、決定事項、保留事項が混ざっています。ブログ記事には、その時点での問題意識や外部情報への反応があります。書籍には、体系化された考え方や、繰り返し使ってきた説明の型があります。

それらをそのまま AI に渡しても、情報量は多いものの、作業手順としては使いにくい。

蒸留では、そこから次のようなものを取り出します。

  • 何度も出てくる判断基準
  • 失敗しやすい進め方
  • 成功したときの手順
  • 人間が確認すべき境界
  • AIに任せてよい作業と、任せてはいけない作業
  • 社内で自然に使っている言葉や定義
  • Issue、PR、レビュー、公開判断に落とせる型

これは単なるナレッジ整理ではありません。

仕事の中で再利用できる「スキル」に変える作業です。

議事録、ブログ、書籍を同じ目で見る

今回、最初に見たのは Notion の議事録でした。

創業からの会議を Notion に残してきたので、そこには会社の意思決定の履歴があります。なぜその機能を作ったのか。なぜその案件を優先したのか。どこで迷ったのか。どの論点が何度も繰り返されたのか。

議事録は、リアルタイムの思考の残像です。

次に、過去のブログ記事も蒸留してみました。

ブログ記事には、その時々のAI開発やシステム開発への見方が出ています。記事として公開するために整えられているので、議事録よりも外向きで、説明の型が見えやすい。繰り返し出てくるテーマも分かります。

さらに、これまで出してきた14冊の書籍も対象にしました。

それらは、システム開発やAI仕様駆動開発について書いたものです。ブログよりも長く、議事録よりも体系化されています。つまり、会社の実務知と思想をつなぐ材料になりました。

この3つを並べると、面白い構造が見えてきます。

情報源 含まれている知見 蒸留後に使いやすい形
Notion議事録 実際の判断、迷い、未決事項、合意形成 判断基準、進行手順、確認観点
ブログ記事 外部情報への解釈、実務視点、説明の型 公開文脈、論点整理、読者向けの語り方
書籍 体系化された方法論、長期的な思想 原則、フレームワーク、教育用の型

それぞれ単体でも価値があります。

しかし、AIで蒸留すると、これらが別々の資料ではなく、一つの「会社の考え方」として扱えるようになります。

ナレッジをSkillsに変える

蒸留した結果、見えてきたのは「これは Skills にできる」ということでした。

ここでいう Skills は、単なるプロンプト集ではありません。

AIエージェントが作業するときに、必要なタイミングで読み込み、手順として使える知識の単位です。

たとえば、ブログを書く Skill なら、単に「ブログを書いてください」と指示するだけでは不十分です。

そこには、次のような知識が必要です。

  • どのディレクトリに記事を置くか
  • frontmatter には何が必要か
  • 著者名の扱いはどうするか
  • draft と公開日の境界はどう管理するか
  • どの検証コマンドを走らせるか
  • どこまでできたら「完了」と呼ぶか
  • 公開記事として避けるべき言い回しは何か

これらは、毎回チャットで説明すると長くなります。

しかし Skill にしておけば、AI は必要なときにその手順を読み、同じルールで動けます。

つまり、ナレッジは「保管されている情報」から「作業を進める力」に変わります。

Pluginにすると、AIが会社の文脈を持ち運べる

さらに面白かったのは、Skills を Plugin として Claude や Codex に取り込める形まで持っていけたことです。

これは感覚として大きな変化でした。

これまでのAI活用では、毎回こちらが文脈を説明していました。

「弊社ではこういう運用です」 「このリポジトリではこうしてください」 「この作業は、まずIssueを確認してから進めてください」 「ブログ記事はこの文体で、検証はここまで必要です」

もちろん、AGENTS.md や CLAUDE.md のような常時コンテキストもあります。それでも、仕事の種類ごとに必要な知識は違います。

Plugin にしておくと、AI は作業に応じて必要な Skills を呼び出せます。

これは、会社の知識をAIに「教える」というより、会社の仕事の仕方をAIが「持ち運べる」ようにする感覚に近いです。

Notion に溜まった議事録。

過去に書いたブログ。

書籍として整理した思想。

日々の開発で積み上がったルール。

それらが、AIエージェントの作業中に参照される。

この状態になると、AIの回答は単なる一般論ではなく、自社の仕事の流れに寄ってきます。

「自分たちの知識をAIで呼び出せる」時代

今回一番大きかった実感は、ここです。

自分たちの知識を、AIで呼び出せるようになった。

しかも、単に検索するのではありません。

会議の内容を探すだけなら、Notion検索でもできます。ブログ記事を読むだけなら、サイトを見ればよい。書籍を読むだけなら、PDFや原稿を開けばよい。

でも、Skills / Plugin 化すると少し違います。

AIが作業しているその場で、必要な知識を呼び出し、手順として適用できます。

たとえば、記事を書くときは記事作成の Skill を使う。Issueを切るときはIssue/PR運用の Skill を使う。校正するときは日本語、事実、論理、用語の観点を分けて見る。リリースするときはdevelopとmainの境界を間違えない。

これは、単なるナレッジベースではありません。

会社の実務知を、AIエージェントの実行環境に接続することです。

ただし、全部を入れればよいわけではない

もちろん、Notion の全ページをそのままAIに読ませればよい、という話ではありません。

蒸留が必要なのは、ここでも同じです。

議事録には、未確定の話や古い判断もあります。創業初期の仮説が、今では違う結論になっていることもあります。顧客情報や個人情報も含まれます。AIに渡すべきではない情報もあります。

だから、Skill にする前に人間が見るべきです。

  • 今も有効な知識か
  • どの作業で使う知識か
  • 断定してよい内容か
  • 古い判断が混ざっていないか
  • 顧客情報や機密情報が含まれていないか
  • 実行手順として安全か
  • 検証方法が明示されているか

AIに蒸留させることはできます。

ただし、最後に「これは会社の手順として残してよい」と判断するのは人間です。

ここを省くと、古い判断や曖昧な思いつきまで、AIが会社のルールとして扱ってしまう危険があります。

ナレッジマネジメントは、読むためから使うためへ

Notion に議事録を残すことは、これまでも大事でした。

しかし、AIエージェントが仕事に入ってくると、ナレッジマネジメントの意味が変わります。

人間が後で読むために残す。

それだけではなく、AIが作業時に使えるように残す。

そのためには、ただ情報を溜めるだけでは足りません。AIが扱いやすい単位に分け、手順、判断基準、検証条件、禁止事項として整理しておく必要があります。

今回の「蒸留」は、その入口でした。

Notion の議事録を読む。

ブログ記事を読む。

書籍を読む。

そこから、繰り返し使える知識を取り出す。

それを Skills にする。

さらに Plugin として Claude や Codex から使えるようにする。

ここまで行くと、ナレッジはアーカイブではなく、仕事の部品になります。

まとめ

Fable 5 を使い倒そうと思って始めたことが、思った以上に大きな発見につながりました。

創業以来 Notion に残してきた議事録には、会社の判断の履歴がありました。過去のブログには、外部情報をどう実務に引き寄せて見てきたかが残っていました。14冊の書籍には、システム開発やAI仕様駆動開発についての考え方が体系化されていました。

それらをFable 5で蒸留すると、単なる要約ではなく、Skills として再利用できる知識が見えてきました。

さらに Plugin として Claude や Codex に取り込める形にすると、AIが自社の知識を作業中に呼び出せるようになります。

これはかなりすごいことだと思います。

AIに質問する時代から、AIが自社の知識を使って一緒に作業する時代へ。

その入口に立った感覚があります。

Notion に眠っている議事録、過去に書いた記事、社内に蓄積された手順。これらは、もう単なる記録ではありません。

蒸留すれば、AIと一緒に使えるスキルになります。

参考