2026年10月7日、AnthropicがClaude Haiku 5.5を発表しました。Haikuシリーズで初めて、思考にどれだけ力をかけるかを調整する effort に対応しています。発表では、要約や分類など、短い仕事を大量に処理する用途が前面に出ています。公式発表
私が注目したのは、賢さの向上に加えて、業務の各所で繰り返す小さな判断に、AIを使いやすくなったことです。OpenAIがGPT-6 Lunaを使うDecisions APIを公開した動きとも、通じるものを感じます。
ただし、まず分けておきたいのが「Claudeのチャット画面で使う話」と「自分のアプリからAPIで呼び出す話」です。effortは両方にありますが、操作、Thinkingの扱い、料金の考え方は同一ではありません。
本記事は2026年10月8日時点の公式資料に基づきます。コードは仕様を説明する例で、当社によるAPI実測は行っていません。後半の市場・設計上の考察は筆者の見解です。
最初に整理:チャットとAPIはここが違う
| 項目 | Claudeのチャット画面 | 開発者向けClaude API |
|---|---|---|
| 使う場所 | Claudeの会話画面 | 自分のアプリや業務システム |
| モデルの指定 | 送信ボタン横のモデルメニュー | model: "claude-haiku-5-5" |
| effortの指定 | メニューの「Effort」 | output_config.effort |
| Haiku 5.5のThinking | オフにできない | high以下なら無効化できる |
| 料金の見方 | 契約プランの利用枠など | APIのトークン使用量など |
この表の操作・Thinkingの違いは、公式ヘルプとAPIのeffort仕様に基づきます。後述する「単価1/10」はAPIの話であり、チャットの月額料金が1/10になるという意味ではありません。
チャットで使う:モデルとEffortを画面から選ぶ
Claudeのチャットでは、次の手順で設定します。
- 新しいチャット、または既存の会話を開きます。
- 送信ボタン横のモデル名を押し、利用可能な選択肢からHaiku 5.5を選びます。必要に応じて「More models」を開きます。
- 同じメニューの「Effort」から、思考の深さを選びます。変更は次の応答から適用されます。
Enterpriseでは管理者がモデルやeffortの選択肢を制限している場合があります。画面に表示される設定を確認してください。モデル・effortの変更手順
例えば、会議メモの整理なら「決まったこと、担当者、未決事項に分けてください」と目的を絞って頼めます。まず画面の既定値で試し、短い整形なら低め、条件の多い比較なら高めのeffortで結果を比べる、という使い方が考えられます。これは筆者の提案です。
Haiku 5.5では、チャット画面のThinkingをオフにはできません。 effortを下げることと、Thinkingを無効にすることは別です。高いeffortは応答時間やトークン消費を増やし、利用枠にも影響します。「高くすれば常に得」という設定ではありません。Thinkingの制限と利用量
APIで使う:Sonnetと共通の指定方法、ただし完全互換ではない
ここからは開発者向けです。Haiku 5.5はMessages APIで呼び出し、output_config.effortで思考の深さを指定します。Sonnet 5.5と同じ指定方法になったという理解は、この範囲では正確です。
Pythonでの基本例
以下はAnthropic公式Python SDKを使う例です。対応するSDKを導入し、実行環境にANTHROPIC_API_KEYを設定してから利用します。キーをソースコードに書く必要はありません。
from anthropic import Anthropic
client = Anthropic()
message = client.messages.create(
model="claude-haiku-5-5",
max_tokens=4096,
thinking={"type": "adaptive"},
output_config={"effort": "medium"},
messages=[{
"role": "user",
"content": (
"次の問い合わせを、請求・技術・その他のいずれかに分類し、"
"理由を一文で書いてください。\n"
"問い合わせ:同じ注文について二重に請求されています。"
),
}],
)
answer = "\n".join(
block.text for block in message.content if block.type == "text"
)
if message.stop_reason != "end_turn" or not answer.strip():
raise RuntimeError(f"応答の確認が必要です: {message.stop_reason}")
print(answer)
thinkingは既定でadaptiveなので省略もできます。ここでは設定を見える形にしました。max_tokensには思考に使うトークンも含まれます。4,096は例示値で、必要量を保証する値ではありません。少なすぎると回答前に上限へ達するため、実データで調整します。
また、先頭のcontentブロックが回答とは限りません。上の例はtextだけを取り出し、途中終了や空の回答をそのまま成功扱いしない構成です。これは文章による分類例であり、本番で固定の値を受け取るなら、構造化出力とアプリ側の検証を別途設計します。移行ガイド
effortは5段階。APIの既定値はSonnetと異なる
| effort | Haiku 5.5で試す用途の目安 |
|---|---|
low |
短い会話、簡単なツール処理、大量の単純な依頼 |
medium |
APIの既定値。多くの仕事を評価する出発点 |
high |
長めのエージェント処理、複雑な指示への対応 |
xhigh / max |
品質向上が費用・時間に見合うと評価できた仕事 |
これはHaiku 5.5向け公式ガイドの整理です。同ガイドは、高いeffortではSonnet 5.5とも品質・費用・速度を比較するよう勧めています。Haikuの設定を上げ続けることが、必ず最適とは限りません。
| APIの設定 | Haiku 5.5 | Sonnet 5.5 |
|---|---|---|
| effortの指定場所 | output_config.effort |
同じ |
| 対応する値 | low / medium / high / xhigh / max |
同じ |
| APIの既定effort | medium |
high |
| Thinkingを抑える設定 | high以下でthinking: {"type": "disabled"}が可能 |
disabledはエラー。high以下でbetween_toolsを指定し、回答前の思考を抑える |
Sonnetのbetween_toolsはツール呼び出しの間の思考を残します。両モデルの設定を共通化するなら、まずadaptiveと明示的なeffortを使い、無効化の分岐はモデルごとに扱うのが自然です。effort仕様、Sonnet 5.5仕様
Haiku 4.5からの移行で確認すること
モデル名だけでなく、次の点を確認します。
- 手動の
budget_tokens指定はadaptive thinkingへ置き換える。 temperature、top_p、top_kは省く。既定値以外の指定はエラーになる。- assistantの書きかけの回答を末尾へ置くprefillは使わず、userターンで入力を終える。
- 思考ブロックを含む履歴を再送する実装では、過去ターンの編集や別アカウントへの再利用の制約を確認する。
Computer useを使っている場合は、ツール形式の変更も対象です。ここは利用プラットフォームによって異なるため、公式移行ガイドを自分の呼び出し方と照合してください。
料金が「1/10」になる条件
標準Claude APIの単価は次のとおりです。単位は100万トークン当たりの米ドル。キャッシュ・バッチ・外部ツールなどの料金を含まない比較です。
| モデルと条件 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| Haiku 4.5 | $1.00 | $5.00 |
| Haiku 5.5:プロンプト10万トークン以下 | $0.10 | $0.50 |
| Haiku 5.5:プロンプト10万トークン超 | $0.50 | $2.50 |
| Sonnet 5.5 | $2.00 | $10.00 |
出典:Haiku 5.5公式料金表、公式発表の比較表、Sonnet 5.5仕様
Haiku 4.5比で1/10なのは、10万トークン以下のプロンプトに適用される入出力単価です。 10万トークンを超える場合は半額です。同じ短いプロンプトの料金帯なら、Sonnet 5.5との入出力単価の比率は1/20になります。
ただし、同じ文章でも新しいtokenizerではHaiku 4.5より約30%多くトークンとして数えられます。さらに思考量や再試行回数も変わるため、仕事全体の請求額が必ず1/10になるわけではありません。tokenizerと出力上限の変更
APIのコンテキストは100万トークン、最大出力は12.8万トークンですが、入れられる量と、安い料金帯の上限は別です。会話履歴を積み重ねるシステムでは、10万トークンの境界も評価条件に含めます。モデル仕様
考察:Decisions APIと共通する「小さな判断」の市場
ここからは筆者の見解です。先日取り上げたOpenAI Decisions APIは、判断を業務へ組み込むためのAPIでした。今回のHaikuも、それとかなり重なる用途を見ているのではないかと考えました。
Decisions APIは、現在パブリックベータで、利用できるモデルはgpt-6-lunaです。専用のPOST /v1/decisionsに、条件判定(predicate)、候補の選択(choice)、段階評価(score)を依頼します。自由な文章を長く生成することより、アプリが扱いやすい判断結果を返す設計です。OpenAI公式ガイド
一方、Haiku 5.5は分類に加え、抽出・要約・ツール利用も担う汎用モデルです。Anthropic自身がルーティングやサブエージェントを用途に挙げているため、「判断を大量に組み込む方向」という読みには根拠があります。ただし、Decisions APIへの対抗を目的に開発した、とまでは確認できません。 発表時期の近さだけで開発意図を断定することはできません。
同じ用途に近づいていても、製品の作り方は違う
| 比較点 | OpenAI Decisions API | Haiku 5.5をClaude APIで使う場合 |
|---|---|---|
| 製品の単位 | 判断向けの専用API | 汎用モデル |
| 主な返り値 | 条件の確率、選択結果、段階評価など | 文章、構造化したデータ、ツール呼び出しなど |
| 料金 | 入力$0.10/100万トークン。出力・キャッシュ読み書きの課金なし | 短いプロンプトでは入力$0.10・出力$0.50/100万トークン |
| 設計上の着眼点 | 質問型と候補・評価基準を定義する | 指示・出力形式・effortを組み合わせる |
Decisions APIにも地域処理や長文入力の料金倍率があり、Haiku側にも前述の10万トークン境界があります。入力の数字が同じでも、同じ費用体系ではありません。Decisions APIの料金・用途、Haiku 5.5仕様
また、Decisions APIのprobabilitiesやconfidenceと、Haikuに文章で「自信を0〜1で書いて」と頼んだ値は、同じものとして扱えません。どちらも自社の正解付きデータで、誤判定の傾向と、人へ回す基準を評価する必要があります。
1/10の単価が変えるのは、呼び出せる「場所」の数
例えば問い合わせ対応には、「担当部署を選ぶ」「必要な情報が揃っているか確かめる」「過去の回答を探す」「回答案をまとめる」といった小さな工程があります。毎回大きなモデルを呼ぶには高くても、低価格のモデルなら、それぞれの工程にAIを組み込む設計を検討しやすくなります。
費用感をつかむため、各呼び出しを入力2,000・課金対象の出力200トークン、合計100万回と仮定します。出力200には思考分も含めるものとし、全件が10万トークン以下、キャッシュ・バッチ割引なしとします。同じ文章を処理した実測ではなく、各モデルでトークン量を固定した単価比較です。
| モデル | 入力20億トークン | 出力2億トークン | 合計 |
|---|---|---|---|
| Haiku 4.5 | $2,000 | $1,000 | $3,000 |
| Haiku 5.5 | $200 | $100 | $300 |
| Sonnet 5.5 | $4,000 | $2,000 | $6,000 |
この仮定ならHaiku 4.5との差は$2,700です。実際のeffortが出力を増やせば費用も増えるため、この金額は予算保証にはなりません。それでも、件数が多い工程ほど、小さな単価差が設計の選択肢を変えることは分かります。
私には、両社が「人と会話するAI」に加えて、業務システムの中で何度も判断するAIの利用を広げようとしているように見えます。OpenAIは用途を絞ったAPIで、Anthropicは低価格な汎用モデルで、その需要に応えようとしている、という捉え方です。
effortは、仕事ごとに計算量を配分するための設定になる
APIを組み込む側なら、定型の分類は低めのeffortで処理し、情報が不足する案件や判断が難しい案件だけ、effortを上げたりSonnetへ渡したりできます。ただし、これは設計案であり、Haikuが自動で振り分けてくれる機能ではありません。
例えば、問い合わせの担当部署をHaikuで選び、注文番号がない場合は必要情報を確認する工程へ、複数部署にまたがる案件は上位モデルへ、返金の実行は人の承認へ送る。こうすると、モデルの強さだけでなく、どこまで任せるかを業務ルールとして決められます。
重要なのは、低価格なモデルに「難しい案件をすべて正しく見抜ける」と期待しないことです。低effortでは検索や検証を省きやすいという公式の注意もあります。必須項目の欠落、既知の例外、出力形式の不一致など、アプリ側で確認できる条件を併用します。Haiku 5.5の推奨設定と注意点
現場で比べたいのは「正しく終えた1件の費用」
単価が下がっても、誤判定の修正に人が時間を使えば、仕事全体では高くなることがあります。筆者なら、次の条件で試します。
- 実際の問い合わせから、通常例・曖昧な例・例外を含む正解付きの評価セットを用意する。
- Haikuの
low・medium・highとSonnetを、同じ完了条件で比較する。分類だけならDecisions APIも候補に加える。 - 正解率に加え、遅い応答の時間、思考を含む総使用量、再試行、人による修正時間を記録する。
- 自動処理してよい範囲と、上位モデル・人へ回す条件を決める。
そのうえで、API費用+再試行費用+人手での確認・修正費用を、正しく完了した件数で割ります。フィールフロウのAI仕様駆動開発でも、先に完了条件を定め、そこまで到達できたかで評価する視点を大切にしています。
Haiku 5.5の面白さは、effortを選べるようになったことと、短い仕事を繰り返し呼べる価格が組み合わさった点にあります。チャットでは日々の作業を助けるモデルとして、APIでは業務の各工程を支える部品として。それぞれの使い方を分けて見ると、今回の変化を実務へつなげやすくなります。
関連記事
- OpenAI Decisions APIがパブリックベータに:公式仕様とJevとの再比較
- Claude Sonnet 5.5登場:Opus 5.5と料金・使い分けを比較(9月29日時点。Sonnetのキャッシュ読込料金は10月7日に改定されています)


