Claude Haiku 5.5登場:チャットとAPIの使い方、安価な「判断」を広げる可能性

Claude Haiku 5.5がeffortに対応。チャット画面での操作とAPI設定を分け、Sonnet 5.5との共通点・違い、Haiku 4.5比で単価1/10になる条件を整理します。OpenAI Decisions APIとの比較から、大量の小さな判断を業務に組み込む可能性を考察します。

著者
岡崎 太
CTO / AIアーキテクト
公開日
読了時間
13分で読めます
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2026年10月7日、AnthropicがClaude Haiku 5.5を発表しました。Haikuシリーズで初めて、思考にどれだけ力をかけるかを調整する effort に対応しています。発表では、要約や分類など、短い仕事を大量に処理する用途が前面に出ています。公式発表

私が注目したのは、賢さの向上に加えて、業務の各所で繰り返す小さな判断に、AIを使いやすくなったことです。OpenAIがGPT-6 Lunaを使うDecisions APIを公開した動きとも、通じるものを感じます。

ただし、まず分けておきたいのが「Claudeのチャット画面で使う話」と「自分のアプリからAPIで呼び出す話」です。effortは両方にありますが、操作、Thinkingの扱い、料金の考え方は同一ではありません。

本記事は2026年10月8日時点の公式資料に基づきます。コードは仕様を説明する例で、当社によるAPI実測は行っていません。後半の市場・設計上の考察は筆者の見解です。

最初に整理:チャットとAPIはここが違う

項目 Claudeのチャット画面 開発者向けClaude API
使う場所 Claudeの会話画面 自分のアプリや業務システム
モデルの指定 送信ボタン横のモデルメニュー model: "claude-haiku-5-5"
effortの指定 メニューの「Effort」 output_config.effort
Haiku 5.5のThinking オフにできない high以下なら無効化できる
料金の見方 契約プランの利用枠など APIのトークン使用量など

この表の操作・Thinkingの違いは、公式ヘルプとAPIのeffort仕様に基づきます。後述する「単価1/10」はAPIの話であり、チャットの月額料金が1/10になるという意味ではありません。

チャットで使う:モデルとEffortを画面から選ぶ

Claudeのチャットでは、次の手順で設定します。

  1. 新しいチャット、または既存の会話を開きます。
  2. 送信ボタン横のモデル名を押し、利用可能な選択肢からHaiku 5.5を選びます。必要に応じて「More models」を開きます。
  3. 同じメニューの「Effort」から、思考の深さを選びます。変更は次の応答から適用されます。

Enterpriseでは管理者がモデルやeffortの選択肢を制限している場合があります。画面に表示される設定を確認してください。モデル・effortの変更手順

例えば、会議メモの整理なら「決まったこと、担当者、未決事項に分けてください」と目的を絞って頼めます。まず画面の既定値で試し、短い整形なら低め、条件の多い比較なら高めのeffortで結果を比べる、という使い方が考えられます。これは筆者の提案です。

Haiku 5.5では、チャット画面のThinkingをオフにはできません。 effortを下げることと、Thinkingを無効にすることは別です。高いeffortは応答時間やトークン消費を増やし、利用枠にも影響します。「高くすれば常に得」という設定ではありません。Thinkingの制限と利用量

APIで使う:Sonnetと共通の指定方法、ただし完全互換ではない

ここからは開発者向けです。Haiku 5.5はMessages APIで呼び出し、output_config.effortで思考の深さを指定します。Sonnet 5.5と同じ指定方法になったという理解は、この範囲では正確です。

Pythonでの基本例

以下はAnthropic公式Python SDKを使う例です。対応するSDKを導入し、実行環境にANTHROPIC_API_KEYを設定してから利用します。キーをソースコードに書く必要はありません。

from anthropic import Anthropic

client = Anthropic()
message = client.messages.create(
    model="claude-haiku-5-5",
    max_tokens=4096,
    thinking={"type": "adaptive"},
    output_config={"effort": "medium"},
    messages=[{
        "role": "user",
        "content": (
            "次の問い合わせを、請求・技術・その他のいずれかに分類し、"
            "理由を一文で書いてください。\n"
            "問い合わせ:同じ注文について二重に請求されています。"
        ),
    }],
)

answer = "\n".join(
    block.text for block in message.content if block.type == "text"
)
if message.stop_reason != "end_turn" or not answer.strip():
    raise RuntimeError(f"応答の確認が必要です: {message.stop_reason}")
print(answer)

thinkingは既定でadaptiveなので省略もできます。ここでは設定を見える形にしました。max_tokensには思考に使うトークンも含まれます。4,096は例示値で、必要量を保証する値ではありません。少なすぎると回答前に上限へ達するため、実データで調整します。

また、先頭のcontentブロックが回答とは限りません。上の例はtextだけを取り出し、途中終了や空の回答をそのまま成功扱いしない構成です。これは文章による分類例であり、本番で固定の値を受け取るなら、構造化出力とアプリ側の検証を別途設計します。移行ガイド

effortは5段階。APIの既定値はSonnetと異なる

effort Haiku 5.5で試す用途の目安
low 短い会話、簡単なツール処理、大量の単純な依頼
medium APIの既定値。多くの仕事を評価する出発点
high 長めのエージェント処理、複雑な指示への対応
xhigh / max 品質向上が費用・時間に見合うと評価できた仕事

これはHaiku 5.5向け公式ガイドの整理です。同ガイドは、高いeffortではSonnet 5.5とも品質・費用・速度を比較するよう勧めています。Haikuの設定を上げ続けることが、必ず最適とは限りません。

APIの設定 Haiku 5.5 Sonnet 5.5
effortの指定場所 output_config.effort 同じ
対応する値 low / medium / high / xhigh / max 同じ
APIの既定effort medium high
Thinkingを抑える設定 high以下でthinking: {"type": "disabled"}が可能 disabledはエラー。high以下でbetween_toolsを指定し、回答前の思考を抑える

Sonnetのbetween_toolsはツール呼び出しの間の思考を残します。両モデルの設定を共通化するなら、まずadaptiveと明示的なeffortを使い、無効化の分岐はモデルごとに扱うのが自然です。effort仕様、Sonnet 5.5仕様

Haiku 4.5からの移行で確認すること

モデル名だけでなく、次の点を確認します。

  • 手動のbudget_tokens指定はadaptive thinkingへ置き換える。
  • temperature、top_p、top_kは省く。既定値以外の指定はエラーになる。
  • assistantの書きかけの回答を末尾へ置くprefillは使わず、userターンで入力を終える。
  • 思考ブロックを含む履歴を再送する実装では、過去ターンの編集や別アカウントへの再利用の制約を確認する。

Computer useを使っている場合は、ツール形式の変更も対象です。ここは利用プラットフォームによって異なるため、公式移行ガイドを自分の呼び出し方と照合してください。

料金が「1/10」になる条件

標準Claude APIの単価は次のとおりです。単位は100万トークン当たりの米ドル。キャッシュ・バッチ・外部ツールなどの料金を含まない比較です。

モデルと条件 入力 出力
Haiku 4.5 $1.00 $5.00
Haiku 5.5:プロンプト10万トークン以下 $0.10 $0.50
Haiku 5.5:プロンプト10万トークン超 $0.50 $2.50
Sonnet 5.5 $2.00 $10.00

出典:Haiku 5.5公式料金表、公式発表の比較表、Sonnet 5.5仕様

Haiku 4.5比で1/10なのは、10万トークン以下のプロンプトに適用される入出力単価です。 10万トークンを超える場合は半額です。同じ短いプロンプトの料金帯なら、Sonnet 5.5との入出力単価の比率は1/20になります。

ただし、同じ文章でも新しいtokenizerではHaiku 4.5より約30%多くトークンとして数えられます。さらに思考量や再試行回数も変わるため、仕事全体の請求額が必ず1/10になるわけではありません。tokenizerと出力上限の変更

APIのコンテキストは100万トークン、最大出力は12.8万トークンですが、入れられる量と、安い料金帯の上限は別です。会話履歴を積み重ねるシステムでは、10万トークンの境界も評価条件に含めます。モデル仕様

考察:Decisions APIと共通する「小さな判断」の市場

ここからは筆者の見解です。先日取り上げたOpenAI Decisions APIは、判断を業務へ組み込むためのAPIでした。今回のHaikuも、それとかなり重なる用途を見ているのではないかと考えました。

Decisions APIは、現在パブリックベータで、利用できるモデルはgpt-6-lunaです。専用のPOST /v1/decisionsに、条件判定(predicate)、候補の選択(choice)、段階評価(score)を依頼します。自由な文章を長く生成することより、アプリが扱いやすい判断結果を返す設計です。OpenAI公式ガイド

一方、Haiku 5.5は分類に加え、抽出・要約・ツール利用も担う汎用モデルです。Anthropic自身がルーティングやサブエージェントを用途に挙げているため、「判断を大量に組み込む方向」という読みには根拠があります。ただし、Decisions APIへの対抗を目的に開発した、とまでは確認できません。 発表時期の近さだけで開発意図を断定することはできません。

同じ用途に近づいていても、製品の作り方は違う

比較点 OpenAI Decisions API Haiku 5.5をClaude APIで使う場合
製品の単位 判断向けの専用API 汎用モデル
主な返り値 条件の確率、選択結果、段階評価など 文章、構造化したデータ、ツール呼び出しなど
料金 入力$0.10/100万トークン。出力・キャッシュ読み書きの課金なし 短いプロンプトでは入力$0.10・出力$0.50/100万トークン
設計上の着眼点 質問型と候補・評価基準を定義する 指示・出力形式・effortを組み合わせる

Decisions APIにも地域処理や長文入力の料金倍率があり、Haiku側にも前述の10万トークン境界があります。入力の数字が同じでも、同じ費用体系ではありません。Decisions APIの料金・用途、Haiku 5.5仕様

また、Decisions APIのprobabilitiesやconfidenceと、Haikuに文章で「自信を0〜1で書いて」と頼んだ値は、同じものとして扱えません。どちらも自社の正解付きデータで、誤判定の傾向と、人へ回す基準を評価する必要があります。

1/10の単価が変えるのは、呼び出せる「場所」の数

例えば問い合わせ対応には、「担当部署を選ぶ」「必要な情報が揃っているか確かめる」「過去の回答を探す」「回答案をまとめる」といった小さな工程があります。毎回大きなモデルを呼ぶには高くても、低価格のモデルなら、それぞれの工程にAIを組み込む設計を検討しやすくなります。

費用感をつかむため、各呼び出しを入力2,000・課金対象の出力200トークン、合計100万回と仮定します。出力200には思考分も含めるものとし、全件が10万トークン以下、キャッシュ・バッチ割引なしとします。同じ文章を処理した実測ではなく、各モデルでトークン量を固定した単価比較です。

モデル 入力20億トークン 出力2億トークン 合計
Haiku 4.5 $2,000 $1,000 $3,000
Haiku 5.5 $200 $100 $300
Sonnet 5.5 $4,000 $2,000 $6,000

この仮定ならHaiku 4.5との差は$2,700です。実際のeffortが出力を増やせば費用も増えるため、この金額は予算保証にはなりません。それでも、件数が多い工程ほど、小さな単価差が設計の選択肢を変えることは分かります。

私には、両社が「人と会話するAI」に加えて、業務システムの中で何度も判断するAIの利用を広げようとしているように見えます。OpenAIは用途を絞ったAPIで、Anthropicは低価格な汎用モデルで、その需要に応えようとしている、という捉え方です。

effortは、仕事ごとに計算量を配分するための設定になる

APIを組み込む側なら、定型の分類は低めのeffortで処理し、情報が不足する案件や判断が難しい案件だけ、effortを上げたりSonnetへ渡したりできます。ただし、これは設計案であり、Haikuが自動で振り分けてくれる機能ではありません。

例えば、問い合わせの担当部署をHaikuで選び、注文番号がない場合は必要情報を確認する工程へ、複数部署にまたがる案件は上位モデルへ、返金の実行は人の承認へ送る。こうすると、モデルの強さだけでなく、どこまで任せるかを業務ルールとして決められます。

重要なのは、低価格なモデルに「難しい案件をすべて正しく見抜ける」と期待しないことです。低effortでは検索や検証を省きやすいという公式の注意もあります。必須項目の欠落、既知の例外、出力形式の不一致など、アプリ側で確認できる条件を併用します。Haiku 5.5の推奨設定と注意点

現場で比べたいのは「正しく終えた1件の費用」

単価が下がっても、誤判定の修正に人が時間を使えば、仕事全体では高くなることがあります。筆者なら、次の条件で試します。

  1. 実際の問い合わせから、通常例・曖昧な例・例外を含む正解付きの評価セットを用意する。
  2. Haikuのlow・medium・highとSonnetを、同じ完了条件で比較する。分類だけならDecisions APIも候補に加える。
  3. 正解率に加え、遅い応答の時間、思考を含む総使用量、再試行、人による修正時間を記録する。
  4. 自動処理してよい範囲と、上位モデル・人へ回す条件を決める。

そのうえで、API費用+再試行費用+人手での確認・修正費用を、正しく完了した件数で割ります。フィールフロウのAI仕様駆動開発でも、先に完了条件を定め、そこまで到達できたかで評価する視点を大切にしています。

Haiku 5.5の面白さは、effortを選べるようになったことと、短い仕事を繰り返し呼べる価格が組み合わさった点にあります。チャットでは日々の作業を助けるモデルとして、APIでは業務の各工程を支える部品として。それぞれの使い方を分けて見ると、今回の変化を実務へつなげやすくなります。

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参考資料